本建物は、門前仲町エリアに位置する地上9階建ての鉄筋コンクリート造共同住宅である。周辺は下町的な生活の気配と都市的な幹線道路沿いのスケールが混在する地域であり、その環境に対して過度に主張することなく、街並みに調和する佇まいを形成している。建物外観は、高さ制限を踏まえて上層階へ向かって段階的にセットバックする構成とし、街路から見上げた際の圧迫感を抑えながら、空へと視線が抜けるスカイラインをつくり出している。
ファサードは、黒を基調とした垂直ルーバー手摺と水平ラインを強調するバルコニー形状を組み合わせている。さらに、雁行するバルコニーが立面に奥行きとリズムを与え、単調になりがちな集合住宅の外観に豊かな表情をもたらしている。これにより、門前仲町の多様な都市景観に呼応する立体的なファサードを実現している。
エントランスアプローチは、奥行きのあるゲート状の構成とし、石調の壁面や床材、木目調の軒天を組み合わせることで、街路から住居領域へと緩やかに移り変わる空間を形成している。敷地内には低木や地被類を中心とした植栽を配置し、夜間には照明が陰影を与えることで、落ち着きのあるアプローチ空間を演出している。都市生活に求められる機能性と、住まいとしての快適性・安心感を両立した共同住宅である。
DATA
| 所在地 | 東京都江東区 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2024.4-2024.12・2025.1-2026.5 |
| 敷地面積 | 542.48㎡ |
| 建築面積 | 296.23㎡ |
| 建蔽率 | 54.60%(60%) |
| 延床面積 | 1881.63㎡ |
| 容積率 | 299.87%(300%) |
| 階数 | 地下0階 地上9階 |
| 構造形式 | RC造 |
雁行バルコニーによる立体的なファサード
本建物におけるデザインの主眼は、都市的な意匠と自然素材の質感を調和させる点にある。ファサード全体には黒を基調とした垂直ルーバー手摺を採用し、建物の輪郭を明確にしながら、落ち着きのある外観を形成している。また、バルコニーを雁行形状とすることで、単調になりがちな住戸階の積層にアクセントを与えている。
一方、バルコニー天井やエントランスの軒裏には木目調の仕上げを用い、居住者の視線に近い部分に温かみを添えている。無機質な外装材と木目素材、直線的な構成と植栽を組み合わせることで、都市環境の中にありながらも過度に主張することのない、穏やかで安定感のある住環境を実現している。
素材の選定や構成においては、経年変化や維持管理にも配慮した。一過性の流行に左右されることなく、長期にわたり価値を維持する普遍性を備えた建築となっている。